十日月夜のおとぎ話
《月の使者がかぐや姫を迎えにいったように…ルナをさらいに行く。ルナの部屋の窓に小石を投げるから。そしたらオレだと思って、窓を開けて?》



その瞬間、一連の会話がノゾムのジョークなのだということがわかった。

ノゾムがあたしの家に来られるわけがない。


なぜなら、あたし達はお互いに住所どころか、

顔も、

声さえも知らない。



ノゾムとチャットで知り合ったのは1ヶ月ほど前のこと。

それ以来、こうしてほとんど毎日のように、文字だけの会話を楽しんでいる。



見知らぬ相手との……

ネットというなんとも頼りなげで現実味のない

“線”で結ばれただけの関係。





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