十日月夜のおとぎ話
「ねぇ。サクも天体のこと詳しいの?」


あたしは少し疑問に思ったことを尋ねた。


月が一番高くなる時刻を知ってるなんて……

それなりの知識があってのことだろう。



「あれ? 知らなかった? オレ、天体オタクだよ?」


「ぷっ……らしくない――!」



自転車の後ろで肩を震わせてクスクス笑った。


そのせいで自転車がぐらついて、ユラユラと蛇行した。



「うわっ。あぶねーって」


「きゃっ!」


慌てて、サクの腰に回していた手に力を入れて、彼の背中にしがみついた。




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