十日月夜のおとぎ話
サクの香りがする。

この香りが大好きだった。


サクの体温を全身で感じながら、彼に身を委ねた。



「ねぇ?」


「んー?」


サクの背中に頬を寄せながら、そっと尋ねる。


「でもなんでそうまでしてあたしと話したかったの? ノゾムと入れ替わってまで……」


「んなの……全部言わなきゃわかんねーの? お前ってめんどくせー女だな」


悪態ついてるわりには、優しい口調のサク。


サクはあたしの方を見なかったけど、なんとなくその表情が想像できるような気がした。


きっと今照れて、顔が真っ赤になってるはず。

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