十日月夜のおとぎ話
自転車から降りたあたしは、そんな感嘆の声を漏らした。

そこは町の高台で、そこからはあたし達の住む街並みが一望できた。



「ほらっ」


誇らしげにそう言うサク。


彼の指差す先にあったのは、

もうすっかり陽が暮れた紺色の空に

ぽっかりと浮かぶ半円のお月様。



「これが十日月……」


「ああ……」


サクは腕時計で時間を確認すると、あたしの方に向き直った。


「時間ぴったりだ」


そしてにっこり笑って両手を広げる。



「ルナ! キスしよ!」





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