十日月夜のおとぎ話
あたしはジッとサクの顔を覗き込む。



「ねぇ。お月様に誓える?」


「何を?」


「もう、浮気しない?」


「しねーよ」


にっこり微笑むサクの顔があたしに近づき、影を落とす。



南の空には、琥珀色したお月様があたし達を見下ろしている。


片割れを失ったように半分しかないその姿はちょっぴり不恰好で……

まるであたし達のように思えた。



あたし達はきっと二人で一つ。


いつも満たされたくて、大切な誰かを求めて探しているんだ。



二人がそろえば、きっと満月みたいに輝けるよね。



優しい月明かりの下。

あたし達は今までで一番とろけるような長いキスをした。





それは……


お月様だけが知っている


あたし達だけの秘密のキス。



【完】


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