ハナミズキ~あの日の君に恋をする~
「「帰ろー」」
「帰りに駅前のカフェ寄ってかない?
新作のチョコレートプラペチーノが超美味しくって!」
「「いいね!いこいこ♪」」
帰り支度を始めると皆が遊びの約束をし始め出した。
いつもなら、それに1番に飛び付く私なんだけど…。
「はぁ……」
ある一点を見つめては大きくため息をつく。
「どうしたの、花菜。
珍しくため息なんかついちゃって」
「小梅。所詮、私は下の下の女。
上の上の人にはお近づきになっては
ならんのかいのぉ?」
私の質問に、周りは沈黙。
目の前にいる小梅は目が点になってしまっている。
「え…っとごめん。何の話だかサッパリ」
チラッ。
と、彼を盗み見る。
「……」
帰る準備万端。教室を出る寸前で
女子ーズ(女子軍団)に捕まってしまった沖田くん。
しかもいつも以上に気合いの入ったネイル。
巻き巻きされた綺麗な髪。
これでもかってくらいに短くされたスカート。
そして…強攻撃・ボディタッチ!!
皆皆、彼に好かれたくて仕方ないんだ。
そして皆、その為に必死に努力をしてるんだ。
それなのに私は…
いつも通りの何も手入れしてない指先。
くしでといただけの天然パーマの髪。
規則より(膝下より)長めのスカート。
彼とは住む世界が次元が違うのだと思い知らされる。
チラッ。
また彼を見てみると
凄い嫌そうな顔をしてる。
「……」
朝、会ったこと覚えてるかな?
地味すぎて覚えられていなかったりしたら…
かなりショックなんですけど。
「…花菜まさか。沖田が気になるの?」
「うわぁ!えっ!?な、ん、なんで!?」
小梅が突然耳元で声をかけてきたから驚いた。
「わっかりやす。
イケメンに一目惚れしちゃったのかー?」
「そ、そんなんじゃないし」
私が慌てていうと
「あっそー?つまんないのぉ」
と頬を膨らませる小梅。
「今朝さ、私遅刻ギリギリだったじゃん?」
「あーうん」
「あのね…実は…」
今朝あった出来事を全て話すと
小梅は一瞬驚いた表情を見せ、
突然ニヤニヤしだした。
「それって漫画でよくあるシチュエーション。
まさに運命の相手じゃないの~?」
「だよね。私もそう思ったんだよ。
でも…覚えてるかな?沖田くん」
「今朝の話でしょ?覚えてるに決まってんじゃん。
それに沖田、数学の授業で当てられた時
スラスラ解けてたし頭良さそうだから
忘れてることはないんじゃない?」
「そっか…ー」
小梅に大丈夫。大丈夫。と言ってもらえて
小梅が友達でよかったーって思っていると。
「何、俺の話?」
びっくり仰天。まさかの彼から話しかけられた。
「え、…」
突然のことに戸惑う私に構わず
「そうそう。沖田の話してたんだよ」
と、小梅はサラッと本当のことを言ってしまった。
ちょっと小梅!っていつもなら怒ってるんだけど…
沖田くんの手前、それはよそう…。
「土方さん…だよね?」
「あ、うん」
「あ、良かった。あってた」
ニコッも笑う笑顔はとても無邪気で
優しそうなその笑顔にまた、ドキドキしてしまった。
「あの…、私のこと覚えてる?
今朝…会ったんだけど」
「今朝??」
「あの…ハンカチ…」
一瞬、考える素振りをみせて
「ああ!ハンカチの子だ。やっぱまた会えたね」
彼はふっと笑って私の方を見た。
今日1日中みてて思った。
見た目はヤンキーだけど全然そんな感じじゃなくて。
優しくて明るくて皆の憧れ的な存在で。
常に皆の中心にいる。そんな人なんだって。
きっと私は彼に一目惚れしてしまったんだと思う。
けどそれは、顔じゃない。
顔だけじゃない。
彼の全てをもっともっと知りたい。
「同じ学校だとは知ってたけど
まさか同じクラスになるとはね。
運命だったり?(笑)」
う、運命なんて…普通口にする!?
なかなか男の子が運命って
女子に言う光景みたことないけど…
イケメンだからありなの??
それとも…意外とチャラい人なのかな?
「下の名前、何ていうの?」
「花菜だよ」
「ん。花菜ね。じゃあこれから宜しく、花菜」
は、はな!?!?
いきなり呼び捨て!?
「隣のキミは?」
「え、私?!」
今までずーっと私の隣に
存在感を消して突っ立っていた小梅が
いきなり声をかけられ驚きの声をあげた。
「小田梅」
梅はそれだけぶっきらぼうに答えた。
きっと梅は苦手なタイプなんだろう…。
チャラいやつ苦手って昔から言ってたし。
「小田梅。略して小梅って私は呼んでるよ!」
「へぇー。じゃあ俺も小梅で」
「はぁ!?なんであんたが!?
そうやって呼んでいいのは花菜だけだからやめて」
小梅は不機嫌オーラを全開にし、
沖田くんを鋭く睨み付けて言った。
けどそんな小梅を見て沖田くんは微笑んだ。
「あんた、花菜のことが大好きなんだね」
「当たり前でしょ。親友なんだから」