クールな青山准教授の甘い恋愛マニュアル

「受験の時とか、俺が腹空かせてるといいタイミングで兄貴が食わせてくれるわけ」
修也は楽しそうに俺の話を綾香に聞かせる。すると、彼女はポツリと呟いた。
「まるでお母さんですね」
「おい……！」
反論しようとしたら、修也が遮って話を続ける。
「うちの母さんの料理は魔女の料理みたいに色がドス黒くて不気味でさあ、基本兄貴の作ったもんしか食べなかったなあ」
「魔女の料理って、どんなのか気になります」
綾香の無邪気な言葉に修也は俺と目を合わせ、慌てて首を横に振った。
「あれは食べちゃだめ。そう言えば、昔母さんがバレンタインにチョコ作ってさ、それを食べた兄貴が腹壊して入院したことあったよね？」
修也は面白そうに語るが、当事者である俺は仏頂面でボソッと返した。