クールな青山准教授の甘い恋愛マニュアル
中村さんは俺の手を思い切り振り払うと、研究室を飛び出す。
「ちょっとやり過ぎた……か?」
ひとりになった研究室でポツリと呟けば、彼女が座っていた椅子の下に真っ赤なマフラーが落ちていた。
屈んでそれを拾い上げる。
「これを取りに戻ったんだろうな」
胸はスッキリしたはずなのに、彼女のあの傷ついた顔が残像となって俺の頭に残る。
そして、今度はじわじわと苦い思いが胸に広がった。
何をやってるんだろう。
口止めなんてしなくても、彼女が人に言いふらさないのはわかっていたはず……。
中村さんは噂話に興じるような学生ではない。
ただ、彼女のあの人を軽蔑したような目を見るとイライラするんだ。
今日だけじゃない。
いつだって中村さんは、俺を冷めた目で見ている。
"女に騒がれていい気になって"
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