死神王と約束の騎士
革命の狼煙
ガヤガヤ
ここはフェリシア王国の王都、ルピナス
今日行われる建国記念日のパレードを一目見ようと国中から沢山の人が集まっている。
「ねえ、お母さん〜。今日はなにがあるのー?」
「今日は王族の方のパレードがあるのよ」
「王族?じゃあお姫様とか王子様?」
「ええ」
「今日は王族の皆様全員出られるのかしら」
「出るだろう」
「ようやくあの子のドレス姿が見られるんだね」
「いつも男みたいな服装ばっかりだからなあ」
「もうすぐね」
「楽しみだなあ」--その頃王宮のとある一室
「うっ、ちょっと待って、リース、きつい、きついってば」
「何を仰っているのですか?コルセットは締めるためにあるのですよ?」
ギュッ
「パレードまでに倒れそう…」
いつも以上に気合の入っているリースは上機嫌で私を着飾っている。
今日は建国記念日のパレードがある。
朝から王宮も準備に大忙しだ。
「兄様たちはいつ来るの?」
「準備でき次第お見えになるとおっしゃっていましたよ」「ハァー」
2時間かけて着飾られた私はげっそりしていた。
「…ノエル様、とってもお綺麗ですよ!」
「…どうも」
コンコン
「あっ、おそらく王子様方ですね」
「通して」
「はい、」
ガチャッ
「エル、おはよう」
「おはよう、スルト兄様」
タッタッタッ
ガバッ
「!?」
いきなり私に抱きついてきたナニカ
「おはよう!姉様!!」
「…おはよう、ゼロ」
そう、突然私に抱きついてきたのはフェリシア王国第二王子のゼロだったスルト兄様は私と完全に血の繋がった兄弟だが、ゼロは異母弟にあたる。
しかし、スルト兄様のように公には私を嫌いな振りをしているが実際はとても慕ってくれている。
ゼロは性格もクールで冷たいように見せかけているが、本当はまだまだ甘えん坊な男の子なのだ。
「姉様すごくきれい!!!今日はその姿でパレードに参加するの?」
「うん」
「…その美しい姿が他人の目に晒されるのか…」
「…なに言ってんのスルト兄様」
「兄上、もう王都のみんなは知っていますよ、姉様の姿」
「貴族に見られるのが気に食わない」
「もうそれ以上醜態を晒さないでくださいシスコン」
「うるさい!ゼノ!」
「…ハァー」
随分カオスな光景だ。
こんな状況王妃や貴族が知ったら卒倒ものだ。
ゾワッ
…なんか寒気が…
「…う…い…」
「「「え?」」」
「もういい加減にしてください!!」
「「「!?」」」
「これから皆様はパレードに参加されるんですよ!?少しは緊張感というものを持ってください!!」
「「「…すみませんでした」」」
1番怒らすといけないのはリースかも「それよりも」
私が静かに言葉を発した途端部屋の空気が変わる。
「今日から作戦を始動させる。全員覚悟はいいな?」
「はい」
「もちろん」
「はいっ」
「うん」
「まぁ今日はお披露目するだけだからそんなに気を負う必要はない。国民と一緒に今日という日を祝おう」
「そうだね」
「じゃあスルト兄様とゼロは先に玄関の方へ。私は後から行くから」
「うん」
「分かった!また後でね、姉様」
「ゼノ、2人を頼む」
「承知いたしました」3人が部屋を出ていってからリースに声をかける。
「リース、巻き込んでごめん」
「いいえ、私はどこまでもお供いたしますよ」
そう言って微笑むリース
本当に私はいい侍女を持った。
「道のりはまだまだ長い。頑張らないと
」
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
--さぁ行こう、革命の狼煙をあげるために「あら、いつもは気の利かない落ちこぼれが今日は気をきかしているわ。」
馬車が止まっている正面玄関まで行くと、すでに全員揃っていた。
王妃リナリアは私が頭から布を被っているのを見てご機嫌だ
よっぽど私の顔を見たくないらしい
「…国民の皆様にまでお見苦しい姿は見せられませんので」
「ええ、そうね」
「ノエルっ、そんなことないよ?ノエルの顔が見苦しいなんて誰も思ってないよ!」
「ソフィア、庇う必要はありませんよ。さぁ、シルバー様と一緒に馬車に乗りましょう」
今回王家の乗る馬車は2台。
1台には国王夫妻とソフィア、もう1台にはスルト兄様とゼロ、そして私が乗る。
スルト兄様とゼロが大好きなリナリアは馬車が別れて不満そうだが、そこは兄様が上手くやってくれた。
「いよいよだね、姉様。なんか緊張してきた」
「大丈夫だよ。今日はご挨拶するだけなんだから」
言いながらゼロの頭をなでる。
「うん」
「それよりどこで宣戦布告するの?」
「…そうだね…、やっぱり人の多い広場でかな」
「分かった」「城門開きます!!」
ワーワー
城門が開いた瞬間多くの歓声が聞こえた
国民に手を振りながら道を進む
私の向かい側に座っているスルト兄様とゼロは身内の私から見ても綺麗な顔立ちだし、街の娘たちも大騒ぎだ。
しかし私は布を頭から被っているのでいつもと同じくらい不気味だろう。
そんな私にも、
「ノエル王女〜!!」
「お顔を見せてー!」
声をかけてくれる人たちがいる
見た目で判断する貴族と違って内面を見てくれる民たちの様子に笑みがこぼれる
--さぁ、動き出そうか「スルト兄様、ちょっと肩貸して」
スルト兄様の肩に手をかけて、立ち上がる。
ザワザワ
突然私が立ち上がったことでみんな驚いているようだ。
「ジルおじさーん!」
ジルおじさん--王都でパン屋を営む元気で明るいおじさんで、周りの人からの信頼も厚い。ちなみにおじさんの作るパンは絶品だ
「ジルおじさん!!」
ジルおじさんに向かって手を振る
「おうよ!ノエルいい服着てるじゃねえか!顔も見せてくれよ!」
「了解!!」
グイッ
頭から被っている布を取る。
その瞬間を忘れる者はいないだろう。
民衆の前で素顔をさらした第二王女ノエルはいつもの不気味な容姿ではなかった
鼻あたりまで伸びた前髪は綺麗に切りそろえられ、目もとがしっかり見える
意思の強い瞳は血のように紅い色をしている
前髪の下の素顔はとんでもないブスだと貴族達にうわさされていたが、その顔は美しいものだった。
「…っ、」
今までさんざん貶めてきたノエルがこんなにも美しい容姿だったと知ったリナリアの動揺は並でない。
リナリアについて言いたい放題だった貴族達も同様の反応だ。「みんな楽しんでるー?」
笑顔で民衆に問いかけるノエルはとても楽しそうだ
「っ、ノエル!!王族がはしたない!すぐに座りなさい!!」
リナリアが血相をかえて叫ぶ
「…うるさいな」
「っ、!?ゼロなにを言っているの?」
「あんたは姉様がやっていることにいちいち文句を言わないと生きていけないわけ?」
「お、お母様に向かってなんて口を…」
「姉様を大切にしない奴は敵だ」
「まぁ…」
いっきに顔が青くなったリナリアは気を失ってしまった。
「お母様、お母様!?しっかりなさってください!」
ソフィアの声掛けも虚しくリナリアは 意識を失ったままだ。「バチが当たったんだよ」
「ざまぁみろって感じだな」
完全に本性を表した王子2人は黒い笑みを浮かべる
「っ、お兄様、ゼロ?いったいどうしたの?お母様が倒れられたのになぜ笑っているの?」
「そんな奴倒れて清々するよ」
「ゼロの言うとおり。俺たちはエルの味方だから。お前のことは嫌いなんだよソフィア」
「…っ、」
「そこまでだ!!」
突然国王が叫ぶ
「国民の前で醜態をさらすな!パレードは中止、城に戻るぞ」
「お待ちください国王陛下」
ノエルが国王に声をかける
「なぜ今まで黙っていた私がこんなことをしたとお思いですか?」
「…」
「もう我慢ならないからです。この国の上層部は腐っています。己の私腹だけを肥やし、民衆にはどんどん税を課す。民のことを考えられない王など必要ない。そんな王は私が全てをかけて王座から引きずり下ろしてやる。」
そう言って国王を睨むノエルの瞳は殺気を含んでいる。
「ご安心ください、優秀な次期国王ならここにいますから」
そう言ってノエルはスルトを見る
「必ず暴虐な王達からこの国を救ってみせる。革命の始まりだ!!」
オォー!!!
ノエルが声高らかに革命を宣言した時多くの民衆がこれに賛同した
民衆だけでなく騎士団の面々と一部の貴族もノエルについた。
ノエルの味方が民衆だけでなかったことに国王たちは動揺した
しかし騎士団も貴族も随分前から影でノエルを支えてきた存在なのだ
ノエルが15歳のこの年、フェリシア王国建国祭は歴史に残るものとなった
ここはフェリシア王国の王都、ルピナス
今日行われる建国記念日のパレードを一目見ようと国中から沢山の人が集まっている。
「ねえ、お母さん〜。今日はなにがあるのー?」
「今日は王族の方のパレードがあるのよ」
「王族?じゃあお姫様とか王子様?」
「ええ」
「今日は王族の皆様全員出られるのかしら」
「出るだろう」
「ようやくあの子のドレス姿が見られるんだね」
「いつも男みたいな服装ばっかりだからなあ」
「もうすぐね」
「楽しみだなあ」--その頃王宮のとある一室
「うっ、ちょっと待って、リース、きつい、きついってば」
「何を仰っているのですか?コルセットは締めるためにあるのですよ?」
ギュッ
「パレードまでに倒れそう…」
いつも以上に気合の入っているリースは上機嫌で私を着飾っている。
今日は建国記念日のパレードがある。
朝から王宮も準備に大忙しだ。
「兄様たちはいつ来るの?」
「準備でき次第お見えになるとおっしゃっていましたよ」「ハァー」
2時間かけて着飾られた私はげっそりしていた。
「…ノエル様、とってもお綺麗ですよ!」
「…どうも」
コンコン
「あっ、おそらく王子様方ですね」
「通して」
「はい、」
ガチャッ
「エル、おはよう」
「おはよう、スルト兄様」
タッタッタッ
ガバッ
「!?」
いきなり私に抱きついてきたナニカ
「おはよう!姉様!!」
「…おはよう、ゼロ」
そう、突然私に抱きついてきたのはフェリシア王国第二王子のゼロだったスルト兄様は私と完全に血の繋がった兄弟だが、ゼロは異母弟にあたる。
しかし、スルト兄様のように公には私を嫌いな振りをしているが実際はとても慕ってくれている。
ゼロは性格もクールで冷たいように見せかけているが、本当はまだまだ甘えん坊な男の子なのだ。
「姉様すごくきれい!!!今日はその姿でパレードに参加するの?」
「うん」
「…その美しい姿が他人の目に晒されるのか…」
「…なに言ってんのスルト兄様」
「兄上、もう王都のみんなは知っていますよ、姉様の姿」
「貴族に見られるのが気に食わない」
「もうそれ以上醜態を晒さないでくださいシスコン」
「うるさい!ゼノ!」
「…ハァー」
随分カオスな光景だ。
こんな状況王妃や貴族が知ったら卒倒ものだ。
ゾワッ
…なんか寒気が…
「…う…い…」
「「「え?」」」
「もういい加減にしてください!!」
「「「!?」」」
「これから皆様はパレードに参加されるんですよ!?少しは緊張感というものを持ってください!!」
「「「…すみませんでした」」」
1番怒らすといけないのはリースかも「それよりも」
私が静かに言葉を発した途端部屋の空気が変わる。
「今日から作戦を始動させる。全員覚悟はいいな?」
「はい」
「もちろん」
「はいっ」
「うん」
「まぁ今日はお披露目するだけだからそんなに気を負う必要はない。国民と一緒に今日という日を祝おう」
「そうだね」
「じゃあスルト兄様とゼロは先に玄関の方へ。私は後から行くから」
「うん」
「分かった!また後でね、姉様」
「ゼノ、2人を頼む」
「承知いたしました」3人が部屋を出ていってからリースに声をかける。
「リース、巻き込んでごめん」
「いいえ、私はどこまでもお供いたしますよ」
そう言って微笑むリース
本当に私はいい侍女を持った。
「道のりはまだまだ長い。頑張らないと
」
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
--さぁ行こう、革命の狼煙をあげるために「あら、いつもは気の利かない落ちこぼれが今日は気をきかしているわ。」
馬車が止まっている正面玄関まで行くと、すでに全員揃っていた。
王妃リナリアは私が頭から布を被っているのを見てご機嫌だ
よっぽど私の顔を見たくないらしい
「…国民の皆様にまでお見苦しい姿は見せられませんので」
「ええ、そうね」
「ノエルっ、そんなことないよ?ノエルの顔が見苦しいなんて誰も思ってないよ!」
「ソフィア、庇う必要はありませんよ。さぁ、シルバー様と一緒に馬車に乗りましょう」
今回王家の乗る馬車は2台。
1台には国王夫妻とソフィア、もう1台にはスルト兄様とゼロ、そして私が乗る。
スルト兄様とゼロが大好きなリナリアは馬車が別れて不満そうだが、そこは兄様が上手くやってくれた。
「いよいよだね、姉様。なんか緊張してきた」
「大丈夫だよ。今日はご挨拶するだけなんだから」
言いながらゼロの頭をなでる。
「うん」
「それよりどこで宣戦布告するの?」
「…そうだね…、やっぱり人の多い広場でかな」
「分かった」「城門開きます!!」
ワーワー
城門が開いた瞬間多くの歓声が聞こえた
国民に手を振りながら道を進む
私の向かい側に座っているスルト兄様とゼロは身内の私から見ても綺麗な顔立ちだし、街の娘たちも大騒ぎだ。
しかし私は布を頭から被っているのでいつもと同じくらい不気味だろう。
そんな私にも、
「ノエル王女〜!!」
「お顔を見せてー!」
声をかけてくれる人たちがいる
見た目で判断する貴族と違って内面を見てくれる民たちの様子に笑みがこぼれる
--さぁ、動き出そうか「スルト兄様、ちょっと肩貸して」
スルト兄様の肩に手をかけて、立ち上がる。
ザワザワ
突然私が立ち上がったことでみんな驚いているようだ。
「ジルおじさーん!」
ジルおじさん--王都でパン屋を営む元気で明るいおじさんで、周りの人からの信頼も厚い。ちなみにおじさんの作るパンは絶品だ
「ジルおじさん!!」
ジルおじさんに向かって手を振る
「おうよ!ノエルいい服着てるじゃねえか!顔も見せてくれよ!」
「了解!!」
グイッ
頭から被っている布を取る。
その瞬間を忘れる者はいないだろう。
民衆の前で素顔をさらした第二王女ノエルはいつもの不気味な容姿ではなかった
鼻あたりまで伸びた前髪は綺麗に切りそろえられ、目もとがしっかり見える
意思の強い瞳は血のように紅い色をしている
前髪の下の素顔はとんでもないブスだと貴族達にうわさされていたが、その顔は美しいものだった。
「…っ、」
今までさんざん貶めてきたノエルがこんなにも美しい容姿だったと知ったリナリアの動揺は並でない。
リナリアについて言いたい放題だった貴族達も同様の反応だ。「みんな楽しんでるー?」
笑顔で民衆に問いかけるノエルはとても楽しそうだ
「っ、ノエル!!王族がはしたない!すぐに座りなさい!!」
リナリアが血相をかえて叫ぶ
「…うるさいな」
「っ、!?ゼロなにを言っているの?」
「あんたは姉様がやっていることにいちいち文句を言わないと生きていけないわけ?」
「お、お母様に向かってなんて口を…」
「姉様を大切にしない奴は敵だ」
「まぁ…」
いっきに顔が青くなったリナリアは気を失ってしまった。
「お母様、お母様!?しっかりなさってください!」
ソフィアの声掛けも虚しくリナリアは 意識を失ったままだ。「バチが当たったんだよ」
「ざまぁみろって感じだな」
完全に本性を表した王子2人は黒い笑みを浮かべる
「っ、お兄様、ゼロ?いったいどうしたの?お母様が倒れられたのになぜ笑っているの?」
「そんな奴倒れて清々するよ」
「ゼロの言うとおり。俺たちはエルの味方だから。お前のことは嫌いなんだよソフィア」
「…っ、」
「そこまでだ!!」
突然国王が叫ぶ
「国民の前で醜態をさらすな!パレードは中止、城に戻るぞ」
「お待ちください国王陛下」
ノエルが国王に声をかける
「なぜ今まで黙っていた私がこんなことをしたとお思いですか?」
「…」
「もう我慢ならないからです。この国の上層部は腐っています。己の私腹だけを肥やし、民衆にはどんどん税を課す。民のことを考えられない王など必要ない。そんな王は私が全てをかけて王座から引きずり下ろしてやる。」
そう言って国王を睨むノエルの瞳は殺気を含んでいる。
「ご安心ください、優秀な次期国王ならここにいますから」
そう言ってノエルはスルトを見る
「必ず暴虐な王達からこの国を救ってみせる。革命の始まりだ!!」
オォー!!!
ノエルが声高らかに革命を宣言した時多くの民衆がこれに賛同した
民衆だけでなく騎士団の面々と一部の貴族もノエルについた。
ノエルの味方が民衆だけでなかったことに国王たちは動揺した
しかし騎士団も貴族も随分前から影でノエルを支えてきた存在なのだ
ノエルが15歳のこの年、フェリシア王国建国祭は歴史に残るものとなった