Chinese lantern
「主様」
その廊下の途中で、輝血は主様の袖を掴んだ。
「ソラは大丈夫なの?」
見上げる輝血に、主様は怪訝な目を向けた。
「大丈夫、とは?」
「だって、体力は器に見合っただけしかないんでしょ? だったらそろそろ、ソラの体力もたないんじゃないの? ソラ、子供じゃん」
「まぁそうかものぅ。だが、ソラが悪鬼にやられたところで、実体がなくなるだけぞ」
何故かちょっと面白そうに、主様が言う。
「笑い事じゃないよ。実体がなくなったら、悪くしたら悪鬼に食われちゃうよ!」
実体がなくなる、ということは、魂の状態、ということだ。
悪鬼の好物である。
「そんなことよりも輝血。おぬし、もっと重要なことを忘れておるぞ?」
にやり、と笑いながら、主様は、ぐっと屈んで輝血に顔を近づけた。
「ソラが実体を失って悪鬼に食われれば、おぬしを守るものは何もいなくなるということぞ?」
あ、と輝血は目と口を大きく開けた。
輝血は魂の案内人なだけ。
一応蛇神に捧げられた人なので、人間からすると輝血も蛇神様なのだが、輝血はまだまだ神ではない。
ただソラのような、人の魂でもない。
人の魂送りは蛇神に仕える者の仕事なので、多少は主様のような力もあるのだろう。
だがまだ、悪鬼に対しては無力だ。
「輝血よ。おぬし、己の身よりもソラが心配かえ?」
「な、何でそうなる」
慌てて言うと、主様は、またも面白そうに眼を細めた。
「ソラがいなくなれば、まず己の身が危ういことに気が行くのが普通でないか? ソラはおぬしの警護役じゃろう?」
「そうだよ!」
「なのにおぬし、我が言うまで己のことなど頭になかったではないか」
うぐ、と輝血が口を噤む。
「……ま、長く一緒に仕事をしておれば、情も湧こうな」
ぽんぽん、と輝血の頭を叩くと、主様はするすると長い廊下の向こうに消えた。
その廊下の途中で、輝血は主様の袖を掴んだ。
「ソラは大丈夫なの?」
見上げる輝血に、主様は怪訝な目を向けた。
「大丈夫、とは?」
「だって、体力は器に見合っただけしかないんでしょ? だったらそろそろ、ソラの体力もたないんじゃないの? ソラ、子供じゃん」
「まぁそうかものぅ。だが、ソラが悪鬼にやられたところで、実体がなくなるだけぞ」
何故かちょっと面白そうに、主様が言う。
「笑い事じゃないよ。実体がなくなったら、悪くしたら悪鬼に食われちゃうよ!」
実体がなくなる、ということは、魂の状態、ということだ。
悪鬼の好物である。
「そんなことよりも輝血。おぬし、もっと重要なことを忘れておるぞ?」
にやり、と笑いながら、主様は、ぐっと屈んで輝血に顔を近づけた。
「ソラが実体を失って悪鬼に食われれば、おぬしを守るものは何もいなくなるということぞ?」
あ、と輝血は目と口を大きく開けた。
輝血は魂の案内人なだけ。
一応蛇神に捧げられた人なので、人間からすると輝血も蛇神様なのだが、輝血はまだまだ神ではない。
ただソラのような、人の魂でもない。
人の魂送りは蛇神に仕える者の仕事なので、多少は主様のような力もあるのだろう。
だがまだ、悪鬼に対しては無力だ。
「輝血よ。おぬし、己の身よりもソラが心配かえ?」
「な、何でそうなる」
慌てて言うと、主様は、またも面白そうに眼を細めた。
「ソラがいなくなれば、まず己の身が危ういことに気が行くのが普通でないか? ソラはおぬしの警護役じゃろう?」
「そうだよ!」
「なのにおぬし、我が言うまで己のことなど頭になかったではないか」
うぐ、と輝血が口を噤む。
「……ま、長く一緒に仕事をしておれば、情も湧こうな」
ぽんぽん、と輝血の頭を叩くと、主様はするすると長い廊下の向こうに消えた。