Chinese lantern
「うんしょっと」

 手入れした刀を腰に差し、ソラが立ち上がる。

「そろそろ向かおうか」

「うん……」

 部屋の隅にある水時計をぼんやり眺めていた輝血は、ゆっくりと立ち上がると、竹筒からほおずきを抜いた。
 主様が持ってきたときよりも、放つ光は強くなっている。
 先を歩くソラを見れば、腰に差した刀は、やはりもうちょっとで先が地面につきそうだ。

「小さくなっちゃったねぇ」

 ぼそりと言うと、ソラはくるりと振り向いた。

「そうだねぇ。あとどれぐらい、輝血とお話できるだろう」

 さらっとした言い方のわりに、内容はエグい。
 ちく、と輝血の胸が痛んだ。

「今から処刑場に行くのに、さらに滅入るようなこと言わないどくれ!」

 怒鳴るように言い、輝血はソラを追い越して廊下をずんずん進む。
 依頼場所までは奥の院からの廊下を歩いていれば何故か着くのだ。

「待ってよ、輝血ー」

 てとてと、と軽い足音を立てて、ソラが追ってくる。
 初めはもっとしっかりとした足音だった。
 こんな、吹けば飛ぶような軽い足音ではない。

 そう思うと、何故か胸が締まる。
 最近とみに、ソラの昔の姿(といっても雰囲気だが)が脳裏にちらつく。
 そのたびに、何だか苦しくなるのだ。

 後ろからの足音を振り切るように、ずんずんと進んでいた輝血は、はた、と足を止めた。
 いつの間にやら刑場だ。

 廊下の途切れは、いつも唐突である。
 歩いていれば、いつの間にか目的地に着いている。
 帰るときも同様、その辺を歩いていれば、気付けば奥の院への廊下を歩いているのだ。
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