Chinese lantern
 子供の喧嘩を繰り広げるこの二人は、見た目もまるで子供である。
 だがどうも、ただの子供ではないらしい。

 そこに、しゅるりと妙な足音を立てて、一人の女子が現れた。

「おやおや、騒がしいこと。全くこの小童は、そんな汚いなりで中に入るんじゃないよ」

 にこにこと笑う顔とは反対に、女子は目にも留まらぬ速さで小童に足払いをかける。
 どすーん、と小童は階の途中から地べたに落ちた。

「水はふんだんにある故、とっとと泥を洗っておいで」

 ころころと笑い、しゅ、と赤い袴を捌くと、女子は輝血を伴って部屋の奥へと入る。
 派手に水溜りに突っ込んだ小童は、さらにどろどろになった身体をのろのろと起こすと、言われた通り、ててて、と堂の裏手に走っていった。

 そこにある小さな小屋には、綺麗な清水が溜まった大きな甕がある。
 そこに頭から突っ込んだ。

 水中で着ていた単衣を脱ぎ、身体についた泥をこする。
 潜ったままなので、頭も綺麗に洗われた。

 単衣も綺麗に洗うと、小童は再び堂へと走っていった。

「此度の依頼は刑場。ソラ、ぬかるでないぞ」

 小童が部屋に入るなり、先の女子が言葉を投げる。

「俺が今までしくじったことがあるかよ」

「その慢心がいかんと言うておる」

「慢心なんぞしてない。いつだって俺は全力で真剣だ」

「そうであろうかの」

 小さく息をついて、女子はまた、しゅるりと妙な足音を立てて部屋を出て行った。
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