Chinese lantern
「なに、ソラがいなくなっても、おぬしはもう大丈夫じゃよ。卵の時期から脱しつつある」

 ぽんぽん、と輝血の頭を叩き、主様は軽く言って、するすると本殿に去っていった。

 輝血はほおずきを持って、部屋の奥の障子を開けた。
 寝ていたソラが、むくりと起き上がる。

 そして輝血のほおずきを見、両手をついて立ち上がると、刀掛けの刀を持った。
 そのまま両手で抱えるように持って、よろよろと輝血のほうに歩いてくる。

 ソラはもう三つほどだ。
 すでに刀はソラの背丈を超えている。

 重いこともあるのだろう、足元の定まらないソラを、輝血は抱き上げた。
 以前主様が脇差に変えるか、と言ったのを断ったのは、戦うときは身長が戻るからだと気付いた。

「変な感じ」

 出会ったときは明らかに年上の青年だったソラを、抱っこしている。

「でもきっと、わっちは誰よりも、ソラの成長を間近で見て来たんだよね」

 若返っているのだから、成長とは言わんかな、と言いながら、輝血はソラと回廊を歩いていく。
 今後はこの回廊を、一人で歩いて行かねばならない。

 ふと、輝血は腕の中の小さなソラに目を落とした。
 戦うときの爆発的な力の放出を抑えれば、ソラが消滅するのを防げるのではないか?
 ここのところ、ずっと寝ているのも、少しでも体力を温存しようという目的からではないだろうか。

「……ソラはお留守番するか」

 呟き、踵を返そうとすると、ソラが、少し暴れた。

「嫌なのか?」

 輝血が言うと、こくりと頷く。
 そして抱えている刀を、ぎゅっと握った。

「でも……。わっちはもう一人でも大丈夫だって、主様が……」

「……」

 刀を抱えたまま、少し考えるように動きを止めたソラが、き、と顔を上げた。
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