Chinese lantern
「あ、違うよ。その、ほら。さすがにこんなに小さいお前を伴って行ったら、お役人たちもびっくりするだろ? お前もいい気はしないんじゃないかと」

 抱き上げないと連れていけない自分を、輝血が邪魔に思っているとソラが思ったのだと、輝血は慌てて否定した。
 ソラは、じ、と輝血を見、またふるふると頭を振った。

 仕方なく、輝血は回廊をほおずきの導くほうへと歩き出す。
 死地に赴くようだ。
 今日迎えに行く罪人でもあるまいし、何故こんな気になるのだろう。

 今から迎えに行く罪人は、刑場までの往路のみで復路はない。
 ソラも、此度は往路のみ。

 また、心の臓が妙な音を立てた。
 先に進みたくない、と思っても、魂送りをすっぽかすわけにもいかない。
 のろのろ歩いているうちに、いつの間にやら足は普通の土を踏んでいた。

「おお、蛇神様。ささ、こちらへ」

 最早見知った役人が、ほっとしたように駆け寄ってくる。
 なかなか輝血が来ないので、やきもきしていたのだろう。
 すぐに幔幕の中に通される。

 すでに罪人は土壇場に座り、首切り役人が刀を振り上げている。
 悪鬼が出なければいい、と詮無いことを思う輝血の心も空しく、びゅっと刀が罪人の首に落ちると共に、もこ、と足元の土が盛り上がった。
 その瞬間、ぱっと腕の中のソラが輝血の胸を蹴って飛び出した。

「ソラっ!」

 思わず輝血は声を上げた。
 輝血の腕から飛び出したソラは、同時に出現した悪鬼の顔辺りまで飛び上がる。

 次の瞬間、ソラの身体は大きくなり、両手で持っていた刀の鞘を、掲げた頭上で払った。
 そのまま悪鬼の頭に振り下ろす。
 ぐしゃ、と悪鬼の頭が割れ、ソラが地に降り立つと同時に、悪鬼の身体はさらさらと崩れ去った。
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