Chinese lantern
終章
「輝血、何をしておるのじゃ」
奥の院の裏手で蹲っている輝血に、主様が声をかけた。
振り向いた輝血の足元は、ところどころ土が掘り起こされている。
足元の穴に何かを埋め、輝血はそれに土をかけると、ぽんぽんと軽く手で土をならした。
「何か植えておるのか」
「曼珠沙華。この前魂送りに行ったときに見つけたんです。珍しいからしばらく見てたら、どうぞって球根譲ってくれたから」
「曼珠沙華? 別に珍しくもないじゃろ?」
「白いんですよ」
「ほぉ。……おぬしがそういうものに興味を持つことのほうが珍しいがの」
ころころと笑い、主様も輝血の横にしゃがみ込んだ。
「この空間に根付く一番の栄養は、その者の想いじゃ。ふふ、蛇いちごなる妙なものがよく茂っておったのも、あ奴がおぬしを想うが故よ」
輝血が主様を見、ちょっと妙な顔をする。
「わっちは蛇いちごなんぞ好きではないですよ」
「そうであっても、奴はおぬしに似合う、と思っておったのじゃろ。浅はかじゃが、可愛いではないか」
輝血はぼんやりと空を見つめた。
ソラがいなくなって、どれぐらい経っただろう。
そのうちひょっこり現れるのではないかとも期待したが、消えてしまってから気配もない。
本当に消えてしまったのだな、と思うと同時に、最後の言葉が思い出される。
ソラはしっかりと別れの言葉を口にしたのに、輝血は己の気持ちさえ、きちんと告げていない。
「ソラをおぬしに与えたのは、間違いだったかもじゃのぅ」
ふぅ、と息をつきつつ、主様が呟いた。
「人の護衛というのは、こうなりかねんから避けるべきじゃ。ましてソラは、初めからおぬしを好いておったのだし。仲が良いに越したことはないし、何より蛇神への絶対服従がないと護衛は務まらん。それに、ソラは己の行く末を、ちゃんとわかっておったし……」
奥の院の裏手で蹲っている輝血に、主様が声をかけた。
振り向いた輝血の足元は、ところどころ土が掘り起こされている。
足元の穴に何かを埋め、輝血はそれに土をかけると、ぽんぽんと軽く手で土をならした。
「何か植えておるのか」
「曼珠沙華。この前魂送りに行ったときに見つけたんです。珍しいからしばらく見てたら、どうぞって球根譲ってくれたから」
「曼珠沙華? 別に珍しくもないじゃろ?」
「白いんですよ」
「ほぉ。……おぬしがそういうものに興味を持つことのほうが珍しいがの」
ころころと笑い、主様も輝血の横にしゃがみ込んだ。
「この空間に根付く一番の栄養は、その者の想いじゃ。ふふ、蛇いちごなる妙なものがよく茂っておったのも、あ奴がおぬしを想うが故よ」
輝血が主様を見、ちょっと妙な顔をする。
「わっちは蛇いちごなんぞ好きではないですよ」
「そうであっても、奴はおぬしに似合う、と思っておったのじゃろ。浅はかじゃが、可愛いではないか」
輝血はぼんやりと空を見つめた。
ソラがいなくなって、どれぐらい経っただろう。
そのうちひょっこり現れるのではないかとも期待したが、消えてしまってから気配もない。
本当に消えてしまったのだな、と思うと同時に、最後の言葉が思い出される。
ソラはしっかりと別れの言葉を口にしたのに、輝血は己の気持ちさえ、きちんと告げていない。
「ソラをおぬしに与えたのは、間違いだったかもじゃのぅ」
ふぅ、と息をつきつつ、主様が呟いた。
「人の護衛というのは、こうなりかねんから避けるべきじゃ。ましてソラは、初めからおぬしを好いておったのだし。仲が良いに越したことはないし、何より蛇神への絶対服従がないと護衛は務まらん。それに、ソラは己の行く末を、ちゃんとわかっておったし……」