Chinese lantern
「わっちも、わかってるつもりでした」

 ぽつ、と輝血が返す。
 輪廻の輪から外れて輝血の傍にいることが、どういうことを示すのか。

「輪廻の輪から外れることを、お互いわかっておった。それは初めから、想い合っておった、ということにもなるのではないかな」

 主様が、言いつつ足元に植えた球根の上に手を翳す。
 じんわりと、土に水気が含まれた。

「おぬしは蛇神じゃ。死ぬことはない。故に人のように、来世があるわけではない。ソラもそれがわかっておったからこそ、自ら輪廻の輪から外れたのじゃ。生まれ変わっても、おぬしとは会えぬからの。おぬしと会えぬ来世など、いらぬと思ったのであろうよ」

 きゅ、と輝血は唇を噛んだ。
 己が蛇神であること、ソラの来世がなくなったこと。
 その意味を、自分の中のソラへの想いを感じるようになって理解した。
 ソラが、そこまで己を本気で想ってくれていたことを、今更ながらに痛感した。

 が、それは決して幸せなことではない。
 ここまで想い合っても、決して結ばれることはないのだ。
 そして、終わりがくれば、二度と会えない。

「それでもおぬしは、それを植えるのじゃな」

 主様の言葉に、ふ、と輝血の口角が上がった。

「叶わなくても、ソラにわっちの心が届けばいいと……願ってしまうのです」

 そう言って、輝血は立ち上がった。
 この空間にも、空というものはあるのだろうか。
 その名の通り、空にいるのであれば、花が咲けば見えるであろう。
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