君に染まる

煉はわざとらしいため息をつくと

「弟だとか、心底どうでもいい。俺が姉さん、って呼ばないのをあんたは悲しがってるみたいだけど、あんたのこと一度も姉だなんて思ったことないから。俺、養子なんだよね。あんたと血繋がってないから」

「え?養子……知らない、どうして?私……知らないよ?嘘だよね?」

私の中の何かが崩れていく

「嘘?普通考えたらわかるよこんなこと。知ろうともしなかったんだし、それだけあんたが馬鹿ってことだよね」

「っ……のいて!今からお母さんに連絡ー「連絡してどうするの、事実を確かめる?それとも両親に怒る?」

「そんなの……だって、おかしいよ!私は何も聞いてない。家族だって弟だって思ってた煉が養子だなんて!弟だって思ってたのに。知らなければよかった、こんなこと。ねぇ?煉は弟でいてよ!これからもずっと……変わらないままーっ……」

鋭く冷たい目を向けられて口を閉じた。

「あんた…さっきから『弟』にこだわるね。それってさ弟じゃないとまずい理由があるんだよね?彼氏とか、彼氏とか、彼氏とか……なぁ?」

「…っやめて!!」

煉を突き飛ばすこともできなくてジタバタする。

「取り乱しちゃってらしくないね。彼氏にバレたときの言い訳でしょ?そんなことぐらいわかるよ。
弟ならまだあんたの中では許されるかもしれないけど、それが養子となると……ねぇ?
どちらにしろ許されないからね。

それしても俺にキスマークつけられるなんて無防備すぎるでしょ。バカなあんたの近くにいれるのはいつだって俺しかないんだから」

首筋の痣に上書きするようにつけられる。

「いたっ……やめて煉!」

「泣いたって怒ったって赦さないからー、もう諦めなよ」

そういって、煉は片手でシャツのボタンを器用に外して鎖骨や胸にキスを落とす。

くすぐったくて集中できない……。

こんなことしてる場合じゃない、止めないとっ!

必死にこらえて

「……じゃあ私はっ……どうすればいい?どうすれば……赦される?」

震える声で聞くと、煉は動きを止めて私を見る。

「今さら赦されると思うんだ……。なにその顔、

俺の『赦さない』はあんたにとってそれだけ、って思うほど小さいことかもしれない…………だけど俺にとってはあんたへの好意を利用させられたんだ。

あんたに甘くて結局許してしまう俺も俺だけど、今回は赦せないし赦したくない………。

だってさ、それもこれも彼氏と自分の関係を守るためだもんな?
だから俺に弟に戻ってほしいって勝手なことを言えるんだよな?


いっつもそう。全部、全部………彼氏のことばっかり、ほんと嫌になるよ。


言っとくけど、俺は嫌だよ。あんた達の関係が壊れたほうが嬉しいし、それに『赦さない』って言葉であんたを縛れるんだから。

………でも、別れたあともあんたは彼氏のことを思って泣くんでしょ?
俺のものになっても、縛り付けて愛してくれるように頑張ったって、あんたは彼氏のことしか考えないんだろ……そんなのもっと嫌だ。

強引で、それも一方的に押し付けた愛なんて、俺は要らない。どうせ冷めてしまうから……それならいっそ『赦すよ』あんたのこと、

気づいたんだよ、壊れたあんたをみたいんじゃないって

だから、あんたとの鎖は切る。あんたを縛るのはもうないから……

その後で…彼氏か、俺か決めてよ」

彼は寂しく笑った。

「……っ」

強引にすると思ってた、『赦さない』って言葉を使って……。

こんな中途半端なんて優しさいらないよ!

いっそ壊してよ!

そしたら煉のこと嫌いにだってなれたのに、突き放すことだって拒むことだって……できたのに。

もう、何もできなくなるじゃない!

夕夜の気持ちを知ればなにもできないよ…………

じゃあ、私はどうすればいいの?







気づけば煉は私の腕を離して起き上がっていた

私も起き上がると煉が優しく抱きついて

「ごめん」

と、一言だけ言うと離れられないようにきつく抱き締められる。

「煉……」

抱き締め返していいのかわからず戸惑ってしまう。

「………今だけは許してお願い抱き締めさせて。……今だけだからー」

煉は耳元で寂しそうに呟きながら私を強く抱き締め続ける。

「わかった、その代わり質問させて。どうして私なの?私のことが…………好きなの?」

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