不毛な恋の行方


土曜日になって、

マンションまで彼が迎えに来てくれた。

結局海に行きたいと言うと
いいよと笑ってオッケーしてくれた彼。


入るつもりはないけれど
波の音が聴きたくなったのだ。


車の中はいつも通り。

他愛も無い話をして

時々彼の横顔に見惚れる。


「あのさ、あんま見ないで。
俺も恥ずかしいから。」

と、苦笑いの彼。

ちょっと照れてる表情も愛おしい。




ずっと続くことはないこの関係。

今はこの瞬間を大切にしたい。
彼の知らないところを無くしていきたい。


そう思う。



サービスエリアに寄ると

「はい、おいで。」
と、手を繋いでくれた。

ここまで来れば知り合いに会う可能性も
かなり少ないからだろう。

いつもよりもすごく甘い。




少しお腹に入れて、また走り出す。


車内に流れる曲を口ずさんでみたり
わたしに触れて来たり。


幸せ過ぎて涙が出そうになった。






しばらくすると海に着いた。





「恵理奈の水着姿見たかったなー。」
と笑う彼。
まだシーズンは程遠い。
遊泳禁止じゃないかな。と思いながら

「泳げないもん。」
「俺がいるじゃん。」

ま、こうしてるだけでもいいけどねー
なんて、優しい人。

海の音を聞くと落ち着く。
わたしが持って来たシートに座り
くつろぐ彼にもたれかかったり
彼を膝枕して過ごしたり。


わたしの膝の上で彼は眠ってしまった。

あぁこんなに近くにいるのに
それなのに彼には大切な人がいる。

分かっているのに
どうしても受け入れられない。



そんな思いがわたしの涙腺を刺激する。

彼は寝ているからいいか、と
ここぞとばかりに静かに泣いた。







しばらくして彼が起きてくると
「ごめんね、寝てた。
あれ?恵理奈?なんか泣いた?」



化粧直しもしたはずなのに、
すぐにバレる。


「…ちょっとね。
なんか海見てたら自然に涙が出ちゃって。

涙活だね!デトックス?」

何て笑っていると
彼に抱きしめられた。



「どうしたの?心配だよ。
恵理奈の不安は何?俺に話せる?」


彼は心底心配してくれているのだろう。


だけど、言えない。





「本当に理由はないんだって!
ありがとう。わたしは幸せだよ。」
と笑うとまだ不服そうではあったけれど
わたしから離れ、一緒に海を見つめた。







その後はアウトレットに行ってお買い物。


ちょうど行きしなに見つけていて
いいなーと思っていたのを
彼も気付いてくれていたらしい。

お互いに服を見あって
彼好みを知れたし、ちゃっかり買った。

そして、わたしが好きな
アクセサリーのブランドに入っていく彼。

「恵理奈どれが好きなの?」

と、ショーケースに入れられた
ネックレスを見た。


買ってあげる、って言ってくれたけれど

思い出に残ると辛いと思い
丁重にお断りした。
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