不毛な恋の行方



やっぱり彼はわたしより余裕がある。

いつも落ち着いて、
わたしのことも手のひらで
転がしてるんだろう。

「…何もありません。
もう!離してください!!」

腕を振り払う。

「恵理奈!」

季節は夏。夜とは言えまだ暑い。
元々ほとんど食事も取れて居ない状態で
こんなに取り乱してしまって、
目眩がするのを感じた。

「おい!恵理奈!」

ふらつき、転ける!!と思ったけれど
そこは愛しい人の腕の中。


「…大丈夫か!?」

ああ、前にもこうやって
助けてくれたことあったな。って
懐かしくなって、ふっと笑ったところで
意識が遠のいた。

「恵理奈!!」















「…恵理奈?」


目を覚ますとそこは初めて見る景色。
どこかのベッドに寝ているようだ。
ここはどこ?

「気分どう?」

視界に愛しい彼。
本当に心配しているようだ。
とことん優しい人だ。

不倫相手に対しても。



「…大丈夫です。
すみませんでした。帰ります。」


ベッドから出ようとすると、

「まだ寝てて。顔色悪すぎ。
ここ、俺の家だから。
ゆっくりしてくれていいよ?」


俺の家…?
紘都さんと奥さんの家…。


だめだ!!

そう思うと、急いでベッドから出て
荷物を持って「恵理奈!!」

彼に引き留められて抱きしめられる。

「恵理奈!ちょっと待って!
何にそんなに焦ってんの!?」

その言葉に、
いつまでも優しい彼に、キレた。

「いい加減にして下さい!
何であなたはそんなに…!!
もう、辛い…!




奥さんの気持ちも考えてあげて下さい!!」



…言ってしまった。
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