恋人未満のこじらせ愛
「理緒、何で泣くんだ?」
「私はあなたの人形じゃない!」
私にだって心はある。
適当な時に相手にされる存在で…離れようとしたら支配下に置かれようとされて……。
それで傷付いていかないわけがない。
「人形の方が、マシだ」
えっ?と思ったのも束の間、体が宙に浮いた。
そしてドサッと乱雑にベッドの上に投げられる。
幸いスプリングが衝撃を全て吸収していったので痛みはない。
「誰にもやらない」
抵抗しようとするが…今にも泣きそうな顔がそこにある。
何で?私じゃなくて智也さんが?
「俺を選んで」
さっきの乱雑さとは全く違う……まるで小さな子供を抱きしめるように、優しく、優しく抱きしめられる。
こんなの…抵抗できるわけない。
心がギリギリと音を立てながら、徐々に砕けて粉々になってゆく。
窓の外には華やかな夜景。
こんなにも、こんなにも綺麗なのに──私の心は、霞んでいく。
砕け散った破片で、どんどん心が混濁してゆく。
お願いだから、優しくしないで。
そしたら突き放すことができるのに。
やっぱり私は、底無し沼から抜け出せない。