恋人未満のこじらせ愛
幸せになれる?

ふと意識を取り戻すと、朝になっていた。

大きな窓はブラインドを下ろしておらず、太陽の光が射して東京の街が見渡せる。

起き上がって、辺りの状況を確認する。
脱ぎ捨てられた服。乱れたシーツ。
そして何より…何も身に付けずにシーツにくるまる彼の姿。
隣で静かに寝ている。

私は起き上がり、服を身に付ける。
きっと起きることはないだろうけど…早くここから帰りたかった。

乱雑に押さえつけるくせに…まるで慈しむように、私に触れる手。
全てを包むような、大きな胸の中で─何度も私を呼ぶ、甘い囁き。
思い出すだけで、泣きたくなる。

──これじゃあ私が大切にされてるみたいじゃない。

『人形の方がマシ』
そんな蔑まれた存在なのに……。
優しくしないで欲しい。
優しくされればされる程、胸が苦しくなるから。


急いで服を着ると、カバンを手にした。
部屋はオートロックだしこのままスムーズに帰宅…は残念ながらできなかった。
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