恋人未満のこじらせ愛
そして電車は予定通りの時間に進み、新橋の駅に到着した。
石見君は到着しているみたいで、さっき来たメッセージで指定された出口へと向かった。

改札を抜けて辺りを見回すと、目の前に石見君は居た。
すぐに気付いてくれて、手を降っている。

「ごめんね?待った?」
「いえ、さっき来たところです」
にっこりと照れながら微笑む石見君。

「色、お揃いですね。気が合います」
言われてみれば…石見君は杢ブルーの七部袖のシャツを着ている。
杢ブルーのシャツに、黒のチノパン。
なんだか被って少し照れ臭い。


「早速ですが、行きましょうか。歩いて五分ぐらいなんで」
「うん、よろしくね」

そのまま歩き始めた石見君の後ろに着いて歩く。
だけど石見君はどれだけ歩いても、半歩前を行くだけ。ほぼ横並びで歩いていく。

そうか、と思う。
石見君は私の歩幅に合わせてくれているんだな。
こんな感じは久しぶりだな。
智也さんと居るときはいつも引っ張られて………って思い出すのは止めよう。

振り切るように頭をぶんぶん振ると「どうかしましたか?」と不思議そうに聞かれる。
「……ごめん、どうでもいいこと思い出して。気にしないでね」

今日は思い出さない。今日は石見君との時間だけを楽しもう。
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