恋人未満のこじらせ愛
結局ピンとくるパスケースがないまま、最終目的地のショッピングセンターまで行くことになった。一キロも離れていないので、大きな通りを歩いて向かう。

有名な百貨店を過ぎた辺りだろうか。
「あれ?」っと気付いたことがある。

「どうしました?」
石見君が不思議そうに聞いてくる。

「いや…そう言えば、この辺来たことあるわ。見覚えある」

すっかり忘れていたけれど、この辺は確か……そうだ。


「あそこじゃないですか?」と石見君がある方向を差す。
確かに、あそこだ。

今はもうフェンスで周りを囲まれていて、大きなクレーンがあるのが確認できる。
大分新しい建物の施工が進んでいるみたいだ。

あの場所には、大学時代にみんなで来た映画館があった。
随分前に、閉館になった場所。


「なつかしいな…」

いつものサークルのメンバーで、何度か訪れたことがある。
ぼんやりとフェンスを見上げながら、当時を思い出していた。
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