恋人未満のこじらせ愛
大学時代のこと
私と大村先輩──大村智也(おおむら ともや)と出会ったのは、もう六年以上も前の話だ。
映画が好きだったので、自然に大学の映画のサークルに入り、そこで出会った。

当時の大村先輩と言えば、サラサラの黒髪にスッと筋の通った顔立ち。
正直、どこに居ても目立つ存在であった。
そして更にその存在を引き立たせていたのは─隣にいる女性の存在だ。
同い年の亜弥子さんという、これもまた清楚で美人の彼女がいたのだ。

二人は当然どこに居ても目を引き、ベストカップルだと噂されるほどの存在であった。


私はそんな二人と同じサークルに所属し、同じ時間を過ごしていた。
サークルの出入りは激しく、大体三十人程が所属していたが、いつもレギュラーで来る人は十名ほど。

その十名の中に二人は入っていて、私も当然入っていた。

そして私も自然に、その十名のうちの一人と付き合い始めた。
二人と同じ学年の、二歳年上の彼氏。
毛塚先輩と言う、優しくて会話が面白い人。


私は幸せだった。
彼氏ができたという事実に『酔っていた』という言葉が似合うだろうか。

もちろん高校時代にも彼氏は居たが、大学に入っての初めての彼氏だ。
おまけに趣味も合う。こんな喜ばしいことがあるのだろうか。
とにかく毎日が幸せだった。

ただ…その幸せに、陰りが見え始めてきていた。
それが意外な形で、私と大村先輩に降りかかってきたのだ。
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