恋人未満のこじらせ愛
大きく「はぁ…」とため息をついて、これぐらいならいいかな、と思ったことを話す。

「昔ね、大学の時にね、当時の彼氏に浮気されたことがあるの。
その相手が、当時の課長の彼女だった」

「えっ、てことは……」

「私達は『浮気された者同士』だったの。
だから…まぁ特別にはなるよね。普通に考えれば。
それを今も引き摺ってるだけ。私も課長も」

お互いに『特別な存在』になった根底は…浮気された者同士という、単純シンプルな話からだった。
傷の舐め合い、慰め合いの関係だ。


私の言葉を聞くと、完全に石見君は黙ってしまった。
沈黙が流れて非常に気まずい。

仕方なく「行こっか」と言って、エスカレーターの方へと促し、二人で下の階へと降りて行った。
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