恋人未満のこじらせ愛
「今更、私を好きになる理由なんてある？」

その言葉に、石見君は一瞬言葉に詰まる。
だけどすぐに口を開いた。
「人を好きになるのに、理由はいりますか？」と。

「俺も何で菅原さんが好きなのか……具体的に説明はできないです。
だから、気づけば好きだったって言うのはあるんじゃないでしょうか？」


「……じゃぁ『あの人が好き』だと思う瞬間って何だと思う？」

昔のような…その人が居るだけでドキドキするだとか、考えただけで胸が苦しくなるだとか……そんな年齢は、とうに過ぎてしまったのだ。
大人になるにつれ、感情で突っ走るより前に、脳からストップがかかる。

そんな難しく考える私に、石見君は単純でシンプルなことを言った。


「気が付けば、その人のことを考えている時点で、好きになってるんじゃないですか？」

徐々に、石見君の言葉が……胸の中を、えぐっていく。


「だって菅原さんも……気が付けば上の空で『誰かのこと』考えてますよね？
課長のことじゃ、ないんですか？」


確かに、気が付けば……ずっと智也さんのことを考えてる。
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