恋人未満のこじらせ愛
すると不意に、甘い唇が首元に落ちてくる。

「起きた時に、隣に居て?」

うん…と呟くと、チクッとした痛みが走る。

「今度は無理矢理、しないから」

首筋から、また痛みが走る。
でも、ギリギリとした痛みじゃない。

まるで媚薬を注がれているような─甘ったるい痛み。
思わず体が疼き、声が漏れていく。


「理緒、愛してる」

『愛してる』
この言葉は…夢のヒトコマだった。いつも見る、夢の中のヒトコマ。

──でも、もう夢じゃない。
朝が来ても、私はこの胸の中に居られる。
部屋から出ていく必要も、もうないのだ。


「愛してる」
もう一度囁かれると、次は唇同士が触れ合う。
激しく、求め合うようなキスの後には…満足そうな、彼の微笑み。

そうして、私達はひとつに溶けていく。
夜の暗闇に隠れながら──心も、カラダも、全部がひとつになる。


きっとこれを 『幸せ』 と言うのだろう。


私は一番、一番欲しかった幸せを…ようやく手に入れた。

< 144 / 170 >

この作品をシェア

pagetop