恋人未満のこじらせ愛

「このフレンチトーストおいしい!」
「じゃぁ沙絵ちゃんひと口ちょうだい」
「じゃぁノリ君そのパン半分ちょうだい」
「半分?!」

……朝っぱらから、先輩夫婦のいちゃつき具合を見せられているのは、何かのプレイなのだろうか。

キッチンにあるテーブルに、買ってきたパンを勝手に並べはじめたらしく(私が好きなパン屋だ)「朝食食べよう!」と二人は勝手に食べはじめている。

私とこの家の主であるはずの智也さんは……二人を前に、正座で俯いている。
何だろう、このいたたまれない空気は………。ホームなのにアウェイ感。


「で、二人はようやく付き合い始めたってことで良いんだよね?」
伊藤さんが急に爆弾の投下を始める。

私達二人は、絞り出す声で「………はい」と言った。
さすがにもう言い逃れはできない。

でも……あれ?っと気付く。

『ようやく』??


何か引っ掛かるワードで、二人で顔を見合わせる。
智也さんの頭の上にもはてなマークが出ているのが、手に取るようにわかる。

そんな私達を見て伊藤さんは「君たちいい加減にしなさいよ」と呆れているみたいだ。
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