恋人未満のこじらせ愛
「ま、せいぜい頑張ってね。大村君もフラれないように頑張んなきゃ」

「大村はフラれるぐらいなら子供でも仕込む…」
ゴンっとゲンコツが江浪さんを直撃。

「そろそろ食い終わったし帰れ」
そのまま智也さんは江浪さんを引きずって行こうとする。
そんなぎゃーぎゃー言い合う二人を尻目に、「じゃぁそろそろ帰るわ」と伊藤さんは帰る支度を始めた。

「伊藤さん……体調大丈夫ですか?」
「ああ、うん。七月はほとんど動けなかったけどね。
今はちょっと貧血だから鉄剤飲んでるぐらい」

立ち上がった伊藤さんは…今まであまり見なかった、ゆったりしたワンピース姿をしていることに気付いた。
お腹はまだ目立たないが、かばんにはマタニティーマークも。
すっかり妊婦さんになっている。

「あぁそうだ」と言って、かばんからポーチを出し、その中からコンシーラーを手に取ると、私の首元に塗っていく。
「色々上手いこと隠しなさいよぉ。ひがみ根性はめんどくさいから」と言ってクスクス笑いながら、首の跡を隠していく。

「私は仕事辞めちゃったけど、菅原さんのこと応援してるからね。何かあったらノリ君に何でも言いなさい?」
そしてコンシーラーのキャップを閉じると、にっこりと笑う。

そして「ノリ君帰るよー」と立ち上がり、江浪さんを引きずって帰って行った。
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