恋人未満のこじらせ愛
「お前は自覚がないから困る…」
頭をボリボリ掻いては、またため息。
どうやらこの人は、どっちかと言うと付き合ってることを公言したいらしい。

「いいじゃないですか。秘密って燃えるんじゃないですか?」

「それは漫画や映画の見すぎだ」

「あなたも映画見すぎでしょう」

「………」

再び黙りこむと、無心にパンをかじり始めた。

「そもそも私達、一年半持ちますかね?」
「不吉な事言うな」

お前はいつも他人事のように話す!とお説教モードに突入した。
こういうところは…やっぱり上司で先輩っぽい。

「第一本当にお前は俺に興味があるのか?!」

「何でそうなるんですか……」

「あんま俺、大切にされてない気がするけど?」

それはだって智也さんが私を好きだとか付き合うとかが微塵も頭に無かったからで…と説明するのがめんどくさい。
めんどくさいので膝立ちになって、そのまま唇を奪うことにした。
口付けすると、ほんのりと芳ばしい香りがする唇の味。

「……善処は、します」
やっぱり慣れないので顔から火が出そうだ。
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