恋人未満のこじらせ愛
そして終電の少し前、私達は解散になった。

いつも新宿三丁目近くで飲んでいるので、私以外の三人は新宿三丁目駅から帰る。
だから私はいつも地下の出口まで送ってから、新宿駅まで歩くのが恒例。

「じゃぁお疲れ様でした」
「お疲れ、月曜日に」

よしこのまま解散と、足早にその場を去ろうとする。
すると背を向けた瞬間──なぜか腕が引っ張られる。
振り返ると、大村先輩は私の腕を掴んでいた。

「おい、行くぞ」

そしてそのまま引っ張っていく。

「何?何ですか?」

「何って…あれ、行かないのか?」

大村先輩の指差す方向を見ると、映画のポスター。
有名SF監督の、五年ぶりの最新作。今日公開の映画だ。

「いや、明日見に行きますけど…」

「デート?」

「いや……」
そんな相手はここしばらくはいない。寂しいお一人様が長い。


「俺のおごりだ。あと二十分あるから大丈夫だな」

「どこ行くんですか?」

「そこ。バルトナイン」


少し先には新宿で有名な映画館がある。
確か出来た頃に一度だけ、サークルメンバーで来たことがある。
舞台挨拶などもやっている大規模な映画館だ。
深夜始まりのミッドナイトショーもわりと多めだった気がする。

大村先輩は私に何も言う隙も与えず、そのまま引きずられるように建物へと押し込んでいった。
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