恋人未満のこじらせ愛
唇を離すと、大きな彼の胸に引き寄せられる。
そしてそのまま、雪崩れ込むようにベッドに倒される。

腕に押さえ込まれ、逃げ場を失った頭。
そのまま唇を塞がれ、舌が口内に侵入を始める。
絡み合う舌を引き離そうと、私は必死に抵抗しようともがいた。

「ダメか? 」

唇を離すと、目の前には切なそうに呟く、あの顔。
目の前のあの顔を見たら─どうしても、求めてしまう。

あの日のこと。

『今日は俺が愛するから』と、愛されたあの夜。
ひたすら求めあった、あの夜。


心が警告音を立てている。『引き返すなら今だ』と。
ここから先は、底無し沼しかないのだと。

でもそれを全て無視するように─勝手に言葉が出る。


「今日だけは、愛して」


もう一度私は、この人に愛されたい。
今日だけでも愛されたい。

──例え夢であっても。

そして、私は底無し沼へと足を踏み入れた。


「理緒、愛してる」


結局私は、底無し沼に溺れた。
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