恋人未満のこじらせ愛
気が付けば夜が明けていた。
目覚めて襲ってくるのは─幸福感。の次に、それ以上の虚無感。


今の私を表すとこうか。
『尻軽女』

恋人じゃない人と一夜を共にしてしまう、只の尻軽だ。


大村先輩が私と寝たのは─ただの習慣。

二人で映画を見たら寂しさを埋め合うように、肌を重ねるだけの関係。そこに愛情はない。
ただどうしようもなく空っぽだった私は、それを知っていながら受け入れた。

一晩だけでも、愛されたかったのだ。


ここから先はどうしようか。
目覚めるまで待ってる?
もし起きた時、拒絶されたら?

拒絶されたら……きっと立ち直れない。


予防線を張るように『これはただの習慣』だと言い聞かせる。
前までの繰り返し。いつもの習慣だ。ただ、それだけなんだと。


そしていつもの習慣にそって、私は部屋を後にする。
痕跡も、何も残さずに。

─何もないフリをしよう。
そう覚悟を決めて、あの部屋を出た。

外は朝の柔らかい日差しで、あの暗闇は嘘のよう。

あの時はまだ冬だったから、随分日差しは違うものなんだな。
そんなことを思いながら、家へと帰った。
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