恋人未満のこじらせ愛
課長はそこに置いてある、私が書いた企画書をペラペラめくった。
そして「仕事は楽しいか?俺はお前に向いてる仕事だと思ったんだが」と言った。

「向いてる……?」
なぜそう思ったのかわからず、首を捻る。


「昔サークルで映画レビュー書いてただろ。文化祭で配ってた」
「ああ……そういえば」

文化祭では毎回サークルメンバーで映画のレビューを書いて、本にして販売していたことがある。一冊百円。
本当にひっそりとしていたけれど。

「俺、お前の文章好きだったんだよ。表現が多彩で、分かりやすくて、気持ちもすごく伝わるから。
だから『伝える』広報が向いてんじゃないかと思ったんだ」

課長がちゃんと私の文章を見てくれていたことも意外だし、未だに覚えているのも意外だ。


「向いてるかはどうかはわかりませんが……仕事は楽しいです。まだ一週間ですが、信じられないぐらい充実してます。
でも何か凹みます。凹むし闇を見た」

「闇?」

「広告業界がブラックな理由って、絶対私みたいなクライアントのせいですよね。『過労死』やらみんな騒いでるけど、結局そうさせてるのって…」
「お前なぁ、普通はそこまで考えないぞ」

課長はお腹を抱えて「想像力が豊かだこと」と言ってハハハと笑った。
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