恋人未満のこじらせ愛
幸いにも誰もエレベーターには乗っておらず、一階まで誰も乗ってくることはなかった。
課長は呑気に「ラーメンでいいか?駅近くによく行く所があるから」と腕を引っ張って歩いて行く。

「………課長」

「何?時間無いからあと牛丼ぐらいしか選択肢は…」

「いや、そうじゃなくて」


今から食べるものの選択じゃなくて。

「そろそろ止めましょうよ。私、回りにバレたら何て言っていいのかわからない」
仮にも今は同じ課で、直属の上司。
個人的に『必要以上に親しい』のがバレたら…どうしていいのか、わからない。


「俺は別にバレてもいいけど」

「へっ…?」

てことはつまり…彼女でも何でもない人と部屋に連れ込み一夜を過ごすロクデナシと、彼氏じゃない人にホイホイ着いてく尻軽がバレてもいいということか?
いや、課長はともかく私は…

「絶対にヤです!!」
プイと横を向くと、それが可笑しかったのかクスりと笑っている。何だか少しイラッとするのは気のせいじゃない。

「別にうち社内恋愛禁止じゃないし。第一江浪は派手にやらかしてたそうじゃないか?噂が名古屋にも来てたぞ」
あぁ、確かにそうだ………。
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