恋人未満のこじらせ愛
仕事の文句の一つでも言ってやろうかと思ったけれど、こういう時に限って課長は忙しそうだ。
結局定時を超えても課長は戻って来ず、現在八時半を回っている。
そろそろ帰りたい所であるが、まだ予算案の印鑑を貰っていない。
「菅原ちゃん大丈夫?先帰るよ」
六島さんは立ち上がってもう帰る準備万端。
こっちを見る目は、心配そうな感じだ。
「課長が帰って来ないから仕方ないよ……うん、お疲れ様」
「しかし……課長ないわぁ……あいつめ…………」
一瞬怒りに満ちた表情を浮かべると「またリベンジ行こう!」と言ってヤル気に満ちた表情になる。
クルクル変わる表情がちょっと面白いなぁ、なんて。
「ははは……ありがとう」
「それじゃまた明日!」
嵐が去っていくように六島さんは帰っていく。
そしてフロアは、嵐が去った後のように静まり返った。
どうしようかなぁと思ったけれど、とりあえず金曜日の撮影に向けてラフを見直す。
企画書に書いた通りに、今回はハロウィンに向けての特集だ。