恋人未満のこじらせ愛
楽しく談笑している時間を引き裂くように「お前ら何してんだ?」と声が飛んでくる。
課長がようやく戻ってきたらしい。

「課長を待ってたんですよ」
「何?デートの誘いか?」

「……人に仕事振っといて何ですかその言い草は」
「残念だな」
「……なのは課長が今になって帰ってきた事実です」

私は呆れるように予算の資料を課長に渡す。
「これで大丈夫でしょうか?問題ありますか?」

「うーん、多分大丈夫だな。分かりやすいし問題ないだろう」
課長は印鑑を押して、私に資料を戻す。

「じゃあ営業部に資料出して帰りますね」

「じゃぁ菅原さん一緒に帰っ…」
「石見、これ明日の朝一」

石見君も一緒に帰ろうとしたみたいだが……鋭い課長の言葉が飛んでくる。

「朝一会議にかけるやつの修正。三十分あれば終わる。
じゃあ菅原はお疲れ。」

「……お疲れ様です」


憐れな石見君。肩を落として私をチラッと見たので『がんばって!』と口パクで合図を送る。
するとにっこりと微笑んで頭をボリボリ掻いている。

石見君、可愛いところあるんだけどなぁ。
何か色々勿体無いなぁ。

そんなことを思いながら「お疲れ様です」と全体に響き渡る声で挨拶をして、フロアを後にした。
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