恋人未満のこじらせ愛
経理部の部屋に行くと、みんなこの話題で持ちきりだ。

「菅原さん、広報部に行くんだって?広報宣伝課って!」


私の移動先、広報部はわりと花形部署と言われている所である。

「そうですね、びっくりしました」

「あの、さっきその課長と親しげに喋ってたけど…」

「それは……」
なんて言葉を言ったらいいのかわからずに言葉が詰まる。

「菅原さんと課長の大村さんは、大学のサークルで一緒だったって言ってたよね?」
隣にいた佐々木さんが身を乗り出し会話に交わる。
何か少し助かった。

「そうです。大村さんは元先輩で…」

「へえ、何のサークル?」

「映研です。ひたすら映画ばかり見るサークルでした」

「あぁ、確かに菅原さん映画好きだもんねー」

「ねぇ当時から大村課長ってモテてた?」

何気なく飛んできたその質問に、少し固まる。
私は少し考えて、こう答えた。

「えっと…先輩には当時、サークル内に彼女がいて……
 めちゃめちゃ美人な彼女で…美男美女っていうか…みんな敵わないっていうか…」

そう、当時の先輩には『超美人な彼女』が居て、みんな遠巻きに見ていた。
なので言い寄っていく人なんて、誰も居なかったと記憶している。

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