恋人未満のこじらせ愛
あなたにとっての私は?
殺風景な高架下に、ガタン・ガタンと電車の通過音が響き渡る。
無機質なコンクリートの空間が、音を増幅させていく。
やがて数本電車が通過するが─肩にのし掛かる体重は変わらない。
「そろそろ帰りましょうか…」
さっきからすれ違う人達の目線が突き刺さる。
大通りではないが、決して少なくはない人通りだ。
それでも…払いのけることは、躊躇してしまう。
「いや、帰りたくない」
ようやく囲う腕から解放されたかと思いきや、左の手首をそっと捕まれた。
「まだ帰らない」
そう呟き、私の手を引いて歩き始める。
湿った手の温度を感じながら、二人で歩く。
この先に目的も、何もないまま─ゆっくりと二人、夜の街に溶けていった。