三途の川のお茶屋さん
第一章
1
「本日最終便、まもなく搭乗開始いたしまーす!」
船頭が声を張る。
その声を合図に、店内で船を待つお客さんが一斉に席を立った。
ここは川のほとり、船乗り場の程近くに建つお茶屋。
手作りの団子と煎茶で、寄る人に一時の休息を提供している。
川の対岸と、こちら側とを繋ぐ手段は船だけだ。
その最終便の出航を見送って、ここ『ほほえみ茶屋』も今日の営業を終える。
「お嬢さん、お会計を頼むよ」
お客様の最後の一人、白髪の老爺が席を立つ。
老爺は懐から財布を取り出そうとした。
「お、おや? おかしいな」