三途の川のお茶屋さん






明日の分の団子の形成を終え、茶葉の確認をして厨房を後にする。店内のテーブルと椅子を簡単に整えると、戸口の暖簾を外す。

暖簾を畳み、戸棚にしまう。

そうして最後に戸口を施錠して、店を出た。店の横の木陰で、十夜は幹に背を預け、三途の川を眺めていた。

「終わったか? じゃ、帰るぞ」

私に気付くと十夜はすぐに歩み寄り、私の手から風呂敷を取り上げる。

「はい、お待たせしました」

十夜はいつも、何も言わなくとも私の閉店準備が終わるのを待っている。

そうして私の荷物を取り上げると、決まって空いた方の手に私の手を取る。こうして私たちは毎日、肩を並べて十夜の屋敷に帰宅していた。

「なぁ幸子、今日は団子、残ってないのか?」





< 10 / 329 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop