三途の川のお茶屋さん
昨日の話を蒸し返そうと口を開いた私の言葉は途中、十夜によって意図的に断ち切られた。それは十夜からの、続く会話の拒絶。
「……うん! 『ほほえみ茶屋』を開けなきゃね」
けれど私は、十夜の言動を不満には思わなかった。だって今の私には、これ以上を望むべくもない。
十夜は今日も、『ほほえみ茶屋』を開けに行こうと言った。『ほほえみ茶屋』が、私の日常。
私の変わらない日常を、十夜が約束してくれる。
決断出来ずに悪戯に時が過ぎるのを待つばかり。そんな曖昧で宙ぶらりんの私には、これに甘える以外の手立てなどないのだ。
私は果たして後十年、悟志さんを待ち続けられるのだろうか。
悟志さんと十夜、せめぎ合う二つの想いに、心が押し潰されそうだった。