三途の川のお茶屋さん
姦しく喚き立てる二人を残し、俺は今度こそその場を後にした。
「おい! 待てっ!」
表面上平静を装いつつ、内心では、既に幸子の存在が下級神にまで知れ渡っているのかと恐々とした。
取るに足らない下級神のちょっかいなどは、歯牙にもかけない。奴らには俺の結界を破る力はない。
けれど俺の居ぬ間に上級神が幸子を狙って来たら、そう考えれば体の芯から湧き上がる恐怖に震えた。
「逃げる気か!?」
背中に遠く男達のがなり声を聞きながら、幸子を失うかもしれない恐怖に俺は怯えていた。一刻も早く、幸子の元に戻りたかった。
俺は焦燥に急き立てられるように天界を後にして、三途の川へ、幸子の元へと急いだ。
同期の奴らばかりではない。昨今では神とは名ばかりで、神通力すら満足に使えぬ者がはびこっている。これは神々の世界にあって、最も憂慮されている事案だ。