三途の川のお茶屋さん
男神にとって、それも能力ある男神になればなるほど、幸子とは喉から手が出るほど欲しい存在なのだ。
「渡してなるものか!」
人だろうと、女神だろうと、幸子は幸子だ!
これまで当たり前に過ごしていた幸子との日常が、いかに得難く、いかに尊い物であったかを思い知る。けれど幸子が女神だったからといって、今更手放せる訳がない。
手放してやる、訳がない!
「幸子は、俺が守る!」
戦慄く拳をグッと握り締め、決意と共に遠ざかる天界を睨みつけた。
天界から帰宅して、逸る心のまま居間の扉を開けた。
居間に幸子の気配がある事は分かっていた。けれど実際に安らかな寝息を立てる幸子を目にして、まず感じたのは安堵。次いで、湧き上がったのは抑えきれない奔流のような情愛だった。