三途の川のお茶屋さん
「十夜ありがとう、おかげで助かりました。それにしても生前のお爺さん、一体どれだけ軟派だったんだろう。あそこまでグイグイ迫ってくるって、なかなかないんですけどね」
「ああ。奴は女で身を滅ぼしたくらいだからな」
「え!?」
ポロリと老爺の死因を零せば、幸子が目を剥いていた。
目をパチクリとさせて俺を見上げる幸子があどけなく、可愛かった。さりげなさを装って、頭をポンポンと撫でた。
「困った客がいれば、遠慮なく呼んでくれ」
営業中の店内は、いまだ客も多かった。
営業の邪魔にならぬよう、俺は再び店外の定位置に戻っていった。店にほど近い木陰は、この五日間ですっかり俺の指定席になっていた。
木の幹に寄り掛かり、顔を上げれば、窓越しに忙しく動きまわる幸子が見えた。俺は飽きる事無く、幸子の姿を眺めていた。