三途の川のお茶屋さん
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開店からしばらく、店内は閑散としていた。
十夜は奥のテーブル席に掛けて、書類を捲っていた。
「十夜、申し訳ないけど店内がその、満席になってしまって」
ところが昼近くになってお客様がドッと押し寄せて、店内は一気に混雑した。
「ん? ああ、気付かないですまない」
十夜はチラリと入口に目線をやる。入店を待つ老婆の姿を確認すると、十夜は飲みかけのお茶を持って席を立った。
私は手早く十夜が空けた席に向かい、テーブルを布巾で拭き、入店を待っていたお客様を通した。
「お待たせしました。こちらのお席にどうぞ」
お客様の注文を確認し、厨房に向かいながらチラリと窓の外に目を向ければ、十夜は『ほほえみ茶屋』にほど近い木陰に腰をおろして書類の続きを捲っている。