三途の川のお茶屋さん
十夜はお客様もまばらな時間は店内で過ごし、混み始めれば既に定位置になっているあの木陰に場所を移る。
十夜がこんなふうに四六時中私に張り付いている事は、これまでなかった。『ほほえみ茶屋』の閉店の時間に合わせて迎えには来るけれど、営業中は十夜もどこか別のところに行っていた。
ところが天界に呼び出しを受けた翌日から既に一週間、十夜はまるで過保護な親鳥みたいに片時も私の側を離れようとしない。
「お姉さん、団子はまだかのぉ?」
「あ! 申し訳ありません。ただいまお持ちします!」
余所事を考えていて、すっかり商品の提供が疎かになっていた。
私は慌てて先ほどのお客様に、注文品の団子と煎茶を運んだ。
「お待たせしました」