三途の川のお茶屋さん
私はテーブルに置かれたままの、空のお皿を片付け始めた。誰も彼もが綺麗に完食し、残す人はいない。
店を出ていく時には、美味しかった、ありがとう、と感謝の言葉を残してくれる人も多い。
けれど、ひとたび船に乗れば全てが無になる。
ここで食べた団子の味が誰の記憶にも残らない事は、僅かばかり寂しい気持ちもある。
けれど、それでいい。
忘却はきっと、人の身に与えられた神からの祝福。
善良な人も、かつて悪人であった人も、皆全てをまっさらにして、新しいスタートラインに立てる。
……では、私は? 新しいスタートを望まずに、三途の川で足踏みをする私は一体、何なのだろう?
数多の人を見送る行為は、人の身には過ぎた行為ではないのか?
先ほどの、老婆の台詞が頭に中に反響していた。
嘘か真実か、果たして意味ある台詞なのかどうかすら怪しい老婆の伝言。そもそも、伝言ですらない可能性もある。
……天界に、生まれた記憶??