三途の川のお茶屋さん


「……幸子、……幸子?」

目の前でヒラヒラと手を振られ、ハッと気付いて見上げれば、十夜が心配そうな表情で私を見下ろしていた。

「え!? あ、十夜!」

十夜は労わりの篭った目を私に向ける。

「ここのところ連日で盛況しているからな。少し疲れているんじゃないか? いつもは停船中まで船に張り付いている懸人も今日は休憩の折、珍しく船を離れていたようだしな。息抜きは必要だぞ」

十夜の手が、私が持ったままのお皿を取り上げた。

そうしてお皿を持ったのと逆の手で、十夜が私の背をそっと促した。

「え? 十夜?」

そのまま十夜の手で肩を押され、トンッと椅子に腰かけた。

十夜は疑問符を浮かべて見上げる私に、得意げに微笑んだ。

「幸子は休んでいろよ。これを洗えばいいんだろう? 皿洗いくらい、俺にも出来る」

! かなり、驚かされた。


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