三途の川のお茶屋さん
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サラリと告げられた台詞。けれどそれは、なんて慈しみに溢れた言葉なんだろう。……十夜という人は、どれだけ広い懐を持っているんだろう。
私は弾かれたように椅子から立ち上がると、洗い場の前で腕捲りする十夜に駆け寄った。
「十夜! やっぱり私も手伝います!」
十夜は駆け寄る私に、困惑を滲ませて首を傾げていた。
「そのまま十夜が洗って下さい? 私がそれを、流して拭きますから」
隣りの十夜を見上げて告げれば、十夜は目を瞠り、次いで弾けるように笑った。
「なるほど。その手伝いは有難いな」
厨房に一緒に並んで立つ、互いに微笑み合う、たったそれだけの事なのに、ドキドキと胸が騒いだ。
「十夜、……ありがとう」
私の頭を、十夜の大きな手がさり気なく撫でる。ささやかな触れ合いは、こそばゆくてくすぐったい。
胸が確かな熱を持ち、忙しなく早鐘を打った。